2ntブログ
------

【カテゴリ:スポンサー広告】

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手 by FC2
20120219

千日回峰行

【カテゴリ:日常】

伝教大師最澄が伝えた天台宗に、千日回峰行という「最も過酷」と云われる行がある。
どういう行かというと、高低差のある比叡山の峰々、山中を、毎日40km歩き続ける、それを1000日間行うという行である。
山中を40km歩くというのは、恐らく体力のある若者でも1日出来るかどうかというレベルだろう。2日連続となると、まず無理だ。
歴史上で、この行を満行した僧侶は多くいるわけではない。
まず、この行をやるに当たり、本当にその人間が千日回峰行をするに値する人物かなどを審理する機関があるという。
そして、それに叶い、始めたとして、もし途中でこの行を断念しなければならなくなった場合(病気、怪我など含め)は、自刃しなければならないという暗黙のルールがある。
そのために行者は、常に小刀を懐中に忍ばせ、行に臨む。
崖から落ちて足を折ってしまった。気力が萎えた。体力が持たない。そんな時は自分で自分を殺さなければいけない。
しかし、それでももしかしたら山中でほとんど生き倒れのようになり、自刃する体力すら残っていない時があるかもしれない。自刃するのが怖い時もある。
その時、どうするか?
腰に紐を巻いているのである。
この紐を死出紐(しでひも)と言い、この紐をほどいて、木に結び、首をくくる。
自刃が駄目なら、縊死をする。
縊死が駄目なら?
手元に手巾という白いハンカチのような布を持っている。この布を顔にかぶせ、そこで静かに眠りにつけ、という。
この3種類の死に方を用意して、行者は行に臨む。
それだけではない。
この行を700日満行すると、そこでさらに厳しい行が待っている。「堂入り」と呼ばれる行で、千日回峰行中、最大の難関と云われる。
内容は、9日間、不眠不臥、断食断水で、不動明王に捧げる文言を唱え続けるというもの。
一体、人間が9日間も飲まず食わず、寝ることも横になることもせず、生きているのかという疑問が湧くが、当然死ぬ者もいるだろうし、一般人が行えば間違いなく死ぬ(死ぬというよりは、その前に気絶したように眠ってしまうかもしれない。ちなみに宗教関係をのぞいて、ギネス的に断眠に挑戦した世界記録はイギリス人の42歳男性が出した266時間という記録)。
堂入りを終えてから、残った日数の回峰行を行い、千日目を終えると千日回峰行が満行となる。
千日回峰行の間は、この行だけに時間が使えるわけでなく、境内の掃除や来客の対応といった日常業務と並行して行われ、実際に行をしているのは午前1時半から9時半までの8時間。就寝は20時過ぎで、起床は0時。日々の睡眠時間は3~4時間という。食事は1日2回。もちろん精進料理。
この千日回峰行をなんと2回、2000日満行した方がおられる。織田信長の比叡山焼き討ち以降、千日回峰行を2回満行したのは3人しかいない。
それが現在の天台宗大阿闍梨である酒井雄哉氏なのだが、何故に自分がこんなことを知っているかというと、この酒井氏の著書を持っているからである。

今日、昼食を食べながらテレビを見ていたら、その酒井氏がNHKの番組に出演してインタビューを受けていた。
淡々と自然体で真っすぐに語られていた。戦中に特攻隊員として鹿児島にいた話など、興味深かった。インタビュアーの方が緊張しているようだった。
本の中で氏が言っている。
「回峰行で得たものは何もない。だけどおかげで今がある」
難行の果てに何が見えたんだ?と歌ったのは、ザ・ハイロウズの真島昌利氏だが、みんながみんな、なにかしら人生の中で辛いことや大きな壁にぶち当たって、それを乗り越えてきた。そんな経験がない人など、この世にいないと思う。
で、それを乗り越えた先に何があったかというと、別に何があるわけでもない。そこに金が落ちていたわけでもないし、ましてや自分が超能力を身に付けたわけでもない。ただ乗り越えてきた、そして乗り越えた自分がそこにいるだけだ。
逆に、乗り越えず、諦めて、やめてきたからいる、今の自分もある。
どの自分も他人から見たら、きっとさほど変わらないのだと思う。けれど、自分の中でははっきりとしている。
偉人の言葉に自分の人生を照らし合わせることなど不遜だけれども、愚かながら、乗り越えられなかった回数よりも乗り越えた回数の方が多い人生を送りたいと、そんなことを自分は思った。
小さな壁も登れない日がある。今日も昼寝してしまった自分なのだ。そんなね、壁にも満たぬスロープごとし乗り越えろ。乗り越えろよバカ、眠気に負けるな、俺よ。って、もう千日回峰行に比べたら、ウンコにもなり得ないほど瑣末なことで煩悶しているのだけど。
氏はこんなことも書いている。
「自分が強くなること、結局は」
まったく、その通りであって、強くなるためには、続けなきゃあかんわけで、続けるためには甘えていてはいけないわけで、甘えないためには常に自分を律するしかないわけで、常に自分を律するためには、忘れてはいけないわけで、忘れないためによく記憶しなければいけないわけで、よく記憶するために「スーパー記憶術」という本を買い込んでるおバカな私ですが、はい、日々精進します。

水行


web拍手 by FC2