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20131020

申請と拒否と沈黙

【カテゴリ:考察】

こんなことを考えた。
AさんとBさんという人がいたとする。
AさんはBさんと友達になりたい。しかし、BさんはAさんと友達になりたくない。
この場合、どちらの意見が尊重されるべきなのだろう。
社会を見渡してみて、例えばフェイスブック。フェイスブックには友達申請というシステムがあり、知り合った人に「友達になりませんか?」という申請を行った後、相手から「OK」の返事が来れば、晴れて二人は友達となる。ところが、まったく見知らぬ人からの友達申請というのも来る。この場合、答えを保留して友達申請を拒否する。つまり、あなたとは友達になれません、という意思表示をする。
というと、これはつまり「友達になりたい」という権利より「友達になりたくない」という権利の方が強いということになるのだろうか。
例えば、ストーカー規制法。どうしてもBさんと友達になりたいと思ったAさんは、その思いの強さあまりBさんをつけまわしてしまった。Bさんは益々Aさんを遠ざける。結果、Aさんは警察に警告を受け、ついには逮捕されてしまった。法律では、拒否する側の人間を守ることになっている。
問題を進めて、晴れて友達になったAさんとBさん。同じ職場で働く同僚だった。今度一緒に食事に行くことになった。Bさんは「イタリアンが食べたい」という。ところがAさんは「イタリアンは食べたくない。和食が食べたい」という。Bさんは和食を食べたくなかった。さて、こんな時どうしたらいいんだろう。申請と拒否のカードが二回でてしまった。Bさんは一生懸命イタリアンのおいしさについて語る。Aさんも負けじと和食の魅力について演説をぶつ。口角沫を飛ばす激論になった。二人とも拒否の姿勢を崩さない。結局、食事には行かないことになってしまった。
問題を進めて。それから数日後、Aさんは仕事で失敗してふさぎこんでしまった。もう、何日も家から出てこない状況になっている。Aさんを心配したBさん、家まで行ってみることにした。
ピンポーン。
Aさん、自転車も車もあるしどうやら家にいる様子だが、やはり出てこない。Bさんはドアを叩いてAさんを呼び続けた。「Aさーん!Aさーん!」すると、ドアの向こうからAさんの声が聞こえてきた。
「何しに来たの?」
「Aさんの様子を見に来たんだよ」
「帰ってくれる?」
「いや、Aさんに家から出てほしいんだよ。外へ行こうよ」
「…家から出たくないんだ」
またもや申請と拒否のカードが出た。こうなると、やはり拒否の権利の方が強い。このまま強引にドアをこじ開けることも出来るが、法律では器物破損と不法侵入の罪に当たる。いったい、どうすればいいんだろうか。Bさんは悩む。今日は帰ることにした。
問題を進めて。
なんとか立ち直ったAさん。ご迷惑をおかけしました、と職場に復帰した。どうしてこんなことになったんだ、と上司に聞かれこう答えた。
「私は以前から不器用で、人と一緒に行動していても、どうしてもワンテンポ人と行動が遅れてしまうんです。けれど、みんなはテキパキと動いていて、私にもっと急いでほしいというんです。急げませんと私は拒否しました。急ぐと失敗するから急ぎたくないんです」
上司は上の者と相談し、翌月Aさんを解雇することにした。前回の失敗で会社に大きな損害をあたえたということが理由だったが、本音はAさんが会社にとって能力不足であるとみなしたためだった。

で。
さて、自分が考えていることというのは、自由意志とその尊重されるべきレベルについてなのだけど、○○したいとか、○○したくないとか、人それぞれ思いはあって、それを意思表示するかしないかは個人の裁量に任されている。申請も拒否も個人の自由だけれど、その内容に対して、社会の許容レベルであったりとか、法律で守られることかどうかなど、ずいぶんと差がある。「それは真っ当な意見だけど、それはただのワガママでしょう」と人に判断されたりする。が、その明確な境目はない。冒頭の「友達になりたい人」と「友達になりたくない人」の例も、これは圧倒的に「なりたくない人」の方が権利が強いが、果たしてその理由が「あの人、口臭いから」とかだったらどうなんだろう。
申請と拒否では、何故拒否が強くて、ケースによって申請の方が強くなるのは何故なのだろうか。
冷房の効き過ぎたファミレスで、みんなもう少しエアコンの温度を上げてほしいと思っている。が、一人だけまだ暑いと思っている人がいて「エアコンの温度を下げてくれ」と言う。店員は、言われたとおりエアコンの温度を下げる。他の客は黙りながらも心の中で「マジかよ!?」と思っている。沈黙された拒否。
結局、強いのは申請でも拒否でもなくって、明確に意思表示ができ、なおかつ言葉の達者な人、頭の回転が速い人であったりする。

Aさんは、会社からの解雇を不当だと思い、裁判を起こした。結果、裁判所ではこの会社がブラック企業に当たるという判決を出した。社員にノルマを課し、競争させ、脱落したものを切り捨てていくというやり方に警告を発したのだった。Aさんは勝訴した。
Bさんは思う。「その会社で黙って言われるまま一生懸命頑張ってきた自分はなんだったのだろう」
申請と拒否と沈黙。
強いものは何か?美徳とされるべきものは何か?正しきもの、卑しきものは何か?真実はなかなか表に出てこない。

横断坊や


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