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過日、近所の公園で奇妙な光景を見かけた。午後7時近くのことである。拙者がいつものように公園のわき道をほひほひ歩いていると、公園内で犬を連れて散歩するご婦人を見かけた。別に見知った人じゃあねえから、つって御婦人に呉れていた目を前方に戻し、数歩、歩き始めたは言いが、はたと思い直してもう一度公園を見やった。別におかしくない光景であるが、何かが気になったのである。そういうことって、あるでしょう?ざっと、公園内を見回してみると、うらさびれた遊具が点々としていて、その周りを木々が夕暮れの微風に揺れ、さわさわしていた。何が気になったのだろう、と思った。もう一度、御婦人に目をやって、また前方に目を戻した。その時である。何がおかしいのか瞬間的に理解した。(三度目のチラ見でハッとした顔になった経験、あなたもおありでしょう?)
実はその公園内には、二匹の犬を連れたご婦人と、猫が一匹いたのである。それ自体はなんてことないことなのだが、その猫の位置取りがおかしかった。
「ははは、猫の位置取りにおかしいもくそもあるかね。猫は人間みたいな高等な生き物とは違うから、位置なんてどこでもいいに決まっているじゃあないか。え、鼻くそ太郎くん」と思われた方もあるかもしれない。そんなあなたが大好きだ。しかし、猫にもれっきとした位置取りというものがあって、例えば夜道を一人で歩いていて、道路の上に猫がいたとする。さて、この時猫は果たしてどの方角を向いているだろうか。お分かりか?お分かりか?おかわりなら冷凍庫にご飯があるからチンして食べてね、と言われ私は席を立った。答えは簡単である。自分(歩行者)の方を向いている。人間がカツカツと足音をならせ近づいてくるのに背中を向けて座っているようなのらくろな猫はいないのである。(ところで、カツカツとツカツカって同意語ですか?ツカツカはカツカツの裏拍ですか?カツカツが男で、ツカツカが女ですか?そしたらコツコツの立場はどうなるんでしょうか?曖昧な推測とツコツコの不在。)
そんなわけで、猫というのは外にいる時、常に周りの動きに対して注意を払っていると言える。そして、そこから猫の位置取りというものが生まれてくるのでR。では、先に書いた公園での猫の位置取りがどうおかしかったか、ということについて言わせて頂こう。まず、猫っちゅう生き物は、犬っちゅう生き物を大体嫌いである。大体というか犬が好きな猫というのは珍しい。よって、ここからはじき出される法則に、猫は犬に近づかない、というものがある。犬は案外そんな意識もないみたいで、結構猫に対しては好意的ですらあるが、猫としてはやはり恐怖なのか、てててーと逃げてしまう。しかし、公園の猫、これですよ、僕の感じていた違和感は。三度見の原因は。彼奴はなんと、散歩している二匹の犬の半径三メートル以内に居りながら、あろうことか、その犬らに対して背中を向けてちょこんと座り、公園脇道路上にいた自分の方を注視していたのである。おかしいやん。と、自分はこっそり呟いた。猫、おかしいやん。と、静かにもう一度呟いた。何故に犬に気もくれず、拙者の様子ばかり窺っているのか。猫は、もしかしたらとんでもないアホ猫で、背後に犬が二匹ハアハア言いながら近づいているのに気づいていないのかもしれなかった。これを人間語的表現ですると、
猫「あっ!あっちからなんや阿呆面したおっさんがこちらに歩いてくるぞ。これは注意注意。おっさんのことだから、こっち見てない振りしていながら急にわっとか言ってくるかも知らんし。はは、哀れなおっさん。ほら、こっち見た!走ってくる気かな。あ、行ってしまったわあ。ん?また見てる。おーい、おっさん、間抜けは顔だけにしとけよ!はは。聞こえたかな・・。あ、なんやびっくりしたような顔してるわ。伝わったのかしらん。いい気味。しかし何を見ているんだろう・・・はて、後ろからハアハアと声が聞こえるけど、これなんやろ。ちょっとおっさんに気ぃ取られすぎたわ。振り返ってみよ。でえええええ!犬、二匹!!」
みたいなことかもしらん。とにかくその不自然な光景に、自分はしばしその場に立ち止まって、猫を見つめていた。猫も負けじと見つめ返してくる。相克の時。或いは、相愛の時。ねこwith拙者。もしかしたら、あまりの恐怖に猫は後ろを振り返ることも出来ず、泣きながら「ニャ・・ア・・(たす・・けて・・)」と言っているのかもしれない。走れメロス、友を守るため!さらば故郷、若きメロスはつらかった。そんな気概さえ滲み出始めた頃、猫の背後にいた犬が移動を始めた。ご婦人が歩きはじめたのである。ご婦人の歩速に合わせて、リードでつながれた犬はトテトテ歩き始めた。すると、ここにきて初めて猫は背後を振りかえり、犬の存在を確認したのである。
「あ、今頃振り返ってるわ」
自分はそんな光景を眺めながらぼうっと考えていたが、次の瞬間、目からうろこが、ゥ、ウロコが・・。六枚、はらはらと・・。
なんと猫は、振り返って、犬が自分から遠ざかっていくや否や、トテトテトテ、犬の後を追っかけて行ったのである。
?????????自分は、頭がパニックになりそうであったが、ご婦人が後から付いてくる猫を確認している。犬は、そこに猫がいることを全く意識せずにクンクンしている。猫はついていく。などなどのヒントを頼りに、一つの答えを打ち出した。それは自分史上ない画期的な真実であった。であった。あった。った。つまり猫もあの御婦人のペットだったのである。ご婦人は犬二匹と猫一匹を散歩させていたのだ。猫にはリードが結ばれていなかったが、紐がなくても、あのように自分でついて行くのだろう。アメリカではキャッツアンドドッグスという言葉で「土砂降り」という意味になるらしいが、こ、この関係は。拙者は「平成狸合戦ポンポコ」が見たくなった。
しかし、まあ、このたった数秒間のストーリー。たった数歩間の物語。スパイスのきいた起承転結と、まさかまさかのどんでん返し。いやー、拙者は驚いたね。こんなことがあるんだあっ、て思った。ちなみに猫は、たは、黒猫。