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20110213

メールフロムモルドバ

【カテゴリ:日常】

過日、ジャパンガイドドットコムってなサイトを人から紹介されて、登録した。
これはどういうサイトかというと、早い話が、外国人と知り合いになろう、という目的のサイトで、延いては外国語の勉強をしたり、友達になった外国人とスカイプでテレビ電話をしよう、という内容のものなのだけど、そこに自分のプロフィールを掲載したわけである。
このサイトには、日本人と知り合いになりたいという世界各国の人達が登録しており、その人達のプロフィールを見ているだけで面白いのだが、例えば「モンゴルの人と知り合いになりたいなあ」と思ったら、こちらから「モンゴル 女性 20歳代 趣味は旅行とスポーツ」みたいなキーワードで検索をかけることも可能で、自分の知り合いたい人にピンポイントでメッセージが送れる仕組みになっている。
それで自分は韓国語を勉強していたものだから、韓国の人と友達になりたいと欲し、何通か韓国人の方にメールを送ってみたのだけど、梨のつぶてでいつまでたっても返事が来ない。まあ、無料サイトであるし、向こうとしてもとりあえず登録したに過ぎず、放置しているのかもしれない。そう思って、自分も以後、放置していたのだけれど・・。

それから数カ月して、自分の元へ一通のメールが届いた。開けてみると、あのサイトから発信されてきたもので、アメリカに住む19歳の女の子からである。
送られてきた英文を英検4級の低能力でもって解読しつつ読み進めると、どうやら「ペンパルになりませんか」ということらしい。ペンパルという言葉の意味がいまいち分からないので調べたれば、現代風に直して「メル友になりませんか」とのこと。それで自分は、そんなサイトに登録しておいてなんなのだが、電子メールという機能が基本的に体に合わない性質なので、「手紙のやり取りにしませんか」と提案したところ、彼女も了解してくれ、去年の暮れから文通をしている。

そうかと思えば、そういうことは重なるもので、暫くしないうちにそのサイトからまた自分の元へ一通のメールが届いた。
開けてみると、モルドバというヨーロッパにある国(恥ずかしながら自分はモルドバという国を知らなかった)からのもので、送り主は当地の詩人とのこと。自分は自身のプロフィール欄に「趣味は詩と哲学」と似非インテリジェンスをにおわせる記載をしていたので、どうやらそれに引っかかってメッセージをくれたらしい。
大丈夫かなあ、と思いつつも片言の英語で返信すると、早速相手の自己紹介が始まり「私の名前は○○。教会のオルガニストとして働きながら、だいたい20カ国の言語を話します。日本文学は芥川龍之介、江戸川乱歩、詩で言えば芭蕉と紫式部を好んで読みます」と書いてあるではないか。
これには自分も「あーあーあー、ほらほらやっぱり。ついてけない、ついてけない」と端から一方的な防戦態勢。必殺技「アイキャンスピークジャパニーズオンリー」をぶちかましつつ、きっと向こうとしても「もっと話せる奴」を期待していただろうだけに、なんだか申し訳なさが募ってきた。
アメリカの女の子は、なんていうか手紙の内容はとてもソフトで、例えば「宮崎の海はとてもきれいです。ミヤザキズシーイズビューティホー」みたいなことばっかりなので、まだいけるのだが、詩人の彼はその後どのようなメールをくれたかというと、「何かを約束してくれる、というセンテンスの“何か”はサムシング、“約束”はプロミスですね。しかし、“してくれる”というのはどのような意味なのですか?」という内容のメールを英文でくれたのであり、自分はとりあえずそれを上記のように和訳し、“してくれる”の英訳を探すと同時に、その説明文を英訳して、また彼に送り返すという事態になってしまったのである。
で、これ調べてみたのだけど、どうやら“してくれる”というのは、日本独特の言い回しであって、正確な英訳は不可能らしい。
だからか、外国人はよくここで躓くようなのだけど、例えば「あなたは私を助けてくれる」という一文があったとする。この場合、通常、英語では「you help me」という風になる。「あなたは私を助ける」であって、“~てくれる”に対応した英単語、文法がないのだ。つまり、この日本語の意味を外国人に説明する時は、言葉のニュアンスで説明しなければならず、自分は考えあぐねた結果、「~してくれる、というのは期待と感謝のこめられた、総じて好意の言葉です。英語ではkindlyが近い表現のようです」というような説明をした。
正直、自分もそんなことを質問されるまでは“~してくれる”の意味について深く考えたことなどなかったから、逆に自分が日本語の勉強をしているようであった。
確かに、この言葉って日本っぽい、すごく繊細な言葉だ。「あなたはそばに“いてくれる”」と言えば、それだけで言わずとも「ありがとう」という感謝の意を十分に含んでいるし、「あなたは“いつも”そばにいてくれる」と言えば、暗に「だからこれからもそばにいてくれるんでしょう?」という期待感も孕んでくる。そしてそれが決していやらしい表現ではなく、なんだか柔らかい好意に包まれているではないか。これがただ単に「あなたはそばにいる」というのでは、全然違う表現になってしまう。簡単なようで複雑なこの言葉、英語で言い表せないのも納得である。
なるほどなあ、と感心しつつ、日本語を使う者として一縷の自信を取り戻した自分であったが、詩人の彼がまた言うには「あなたの説明でよく分かりました。しかし、約束してくれる、の“してくれる”と、助けてくれる、の“けてくれる”の違いは何ですか?」と再度の質問。
これには自分も、くわあ、ってなって、その、くわあ、ってなって頭を抱え込んだ僕の姿を出来ることならあなたにお見せしたかった。
さて、これ、あなたには説明できますか?
実はこれ、中学国語で習っている活用形のレベルの話なのだが、結局自分には分からず、インターネットで活用形を調べ直して這這の体でどうにか説明文を英訳した。して、その結果を彼に送ったのだが、彼からお礼のメールが届いて、自分がユアウェルカムと返してから、メールが来ない。
「これは・・見切りをつけられたのだろうか。もう来ないのかな」と思っていたら、数日して、ようやくメールが届いた。
また難しい質問だったらどうしようと危惧しつつ、恐る恐るメールを開くと、そこには「あなたは村上春樹を読みますか?」という内容のことが書かれてあり、ここに至って自分はようやく普通の会話が出来ると安堵して胸を撫で下ろした次第。最近、そんなことがありました。

自転車に乗る少女


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