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20100621

阿呆の特売

【カテゴリ:阿呆】

先月、自分がアルバイトをしているスーパーで砂糖の特売があった。1kg袋が100円という値段で、たくさんのお客さんが来店してくれたのだが、店内でちょっとした問題が起こった。その顛末について書いてみたい。
その特売の情報は、事前に広告で知らされてあった。○日限定タイムセール10時より100袋限定!と当日の目玉商品になっていたようである。なっていたようである、というのは、自分はその広告を就業前に確認していなかったので、当日の特売情報を知らなかったからだ。で、自分はいつものように朝の8時から出勤し、配達に回った後、9時の開店に向け品出しをしていた。しかし。
9時、店がオープン。自動ドアの前で開店待ちをしていた数名のお客さんが入店してきた。それはいつもの朝の出来事で、自分はこの時、やっつけ仕事のごとく淡々と海苔やリードキッチンペーパーの補充などをしていた。カゴを載せた台車を押しながら生鮮以外の補充に回る。最初はどの商品がどこにあるのか分からないが、慣れてくるとこれはあっちの棚、これはそっちの棚、とすぐに反応できるようになる。最近は、お客さんの「重曹はどこですか?」「ハイミーはどこですか?」といった要望にも即座に答えられるようになった。ちなみにハイミーは化学調味料の商品名。
事態の異変に気付いたのは、開店から30分ほど経った時である。いつもの調子でそんな補充作業に没頭していると、ふと、あるお客さんの奇怪な行動が目に入った。6,7メートル先にある特売コーナーで、中腰になって何かをビリビリ破いているお客さんがいるのである。自分の立ち位置からはちょっと死角になって見えづらいが、何やら茶色い紙だ。その周りをまた数名のお客さんが囲んでいた。
はて、あれは何をやっているのだろうか。
近づいて見てみると、果たして破いていたのは砂糖を包んでいる紙袋であった。1kg袋を25個入れた米袋のような袋で、これはおそらく店長か誰かが10時スタートのタイムセールに向け、開封せずにここに置いておいたのであろう。客が間違えて持って行かぬように紙袋のまま置いてあったものを、待ち切れずに破ったと思われる。本来であれば、自分がここで「それは10時からお安くなる商品ですよ」と忠告してあげればよかったのかもしれないが、自分もチラシを見ていないから、タイムセールがあるなんてことを知らない。紙袋を破ってまで持って行くなんて、今日は砂糖が良く売れる日だと思い、一緒になって紙袋を破いてあげたら、瞬く間に砂糖がなくなった。瞬く間になくなったもので、嬉しくて、その下に積んであった紙袋を開封すると、なんとそれも瞬く間になくなってしまったのである。やあ、今日は砂糖が痛快な売れ行きだと一人ヘラヘラしているうちに、紙袋は4体きっかり、つまり100袋が20分足らずで完売してしまった。
売れた。よかった。つって自分は満足。補充作業に戻ろうとすると、一人二人とまだ客がやってくる。砂糖を買い求めに来たらしい。「砂糖はどこかしら?」と言うので、自分は「つい今しがた完売しました」というようなことを教えてあげた。すると、相手は怪訝な表情をするので、「どうしたのですか?」と問えば、「いや、私は砂糖が10時からのタイムセールだと聞いていたので来たのだけど、なんでもう無いの?」と言う。そこで初めて、くわあ、砂糖は10時からのタイムセールであったのかっ、と自分は気づき、どうしよう、と焦った。その後続々とやってくる砂糖を買い求める客に圧倒され、一時、店内は騒然、パニック状態、自分は羊のごとくかよわき存在となって、取り囲む買い物客に「おかしいじゃない!」と責められ続けた。
数分後。その様子を見ていたスーパーの本部長が、「高沢君、砂糖はもう裏にもないの?!」と助け船を出してくれたので、渡りに船、自分は一旦バックヤードへと退却した。そこで台車に載った砂糖2体(50袋)を発見したので、表に出そうとすると、副店長がやってきて、「それは明日の分だから出してはいけない」と言う。自分は台車を押すことも引くことも出来ず、のっぴきならぬ状態に。船は資材置き場という小さな海上で漂流を始め、自分はその場を右往左往。「いや、これこれこういう事情で、本部長が・・」と言うものの、副店長は「店長に確認してからでないと出せない」と言い、砂糖と僕が右往左往しているうちに、しびれを切らせた本部長がやってきて、副店長との協議の結果、出しましょう、ということに相成り、走った。自分は砂糖を載せた台車を押して、走った。
一方、砂糖を待つ客は輪を成して、特売コーナーを囲んでいた。口々に「10時に来たのに無いのはおかしい」「そうでしょ」「出してくれなきゃ困るわ」とささやき合っている。時間とともに輪は大きく膨らんでいくようであったが、自分はその輪を割るようにして台車ごと突入。お待たせしましたあっと大きく叫んで、砂糖の手売りを始めたところ、2分ほどで50袋は売れ切れてしまった。まるで嵐のようであった。10時からのタイムセールとは言い条、レジでは開店と同時に値段を引き下げていたらしく、結局10時前でも砂糖は安くなっていたようで、あの最初に紙袋を破いていたおっさんがちょっぴり憎らしい。100円の砂糖を買って、もうとっくに家に帰り、今頃はアイスでも食べているのだろうか。とにもかくにも終わったなあ、と思い、今度こそ補充作業に戻ろうとすると、また一人のお客さんが来て「砂糖はもう無いの?」と言う。今度は引け目もない。頭を下げて「すみません、もう売り切れました」と言うと、そのお客さんは店内に掲げられた時計を指さし、言った。
「今10時になったんじゃないの!なんで無いの?」
またもや、続々と集まり始める客。今度は、10時ですぐに砂糖がなくなるのはおかしい、と皆が口々に言う。チラシに載せるぐらいなのだから、それなりの数を用意しておけ、と。自分もそう思う。そうだよねえ、いい加減だよねえ、砂糖まだあるんでしょ?という声が飛び交い、ヒートアップしていく店内で、カゴの中に砂糖を入れた先ほどのお客さん達が何食わぬ顔で買い物を続けていて。未来は明るいな、って思った。


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