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20100708

オグリキャップのこと

【カテゴリ:日常】

オグリキャップが死んだらしい。おかんから電話がかかってきて「やだ、あんたは!知らないの?!」と言われた。競馬好きの息子だから知っていて当然、とでも思っていたのだろう。そんな一般的な話題でもないと思うんだけど・・と苦笑しながら、「知らなかった」と言うと、「昨日かな、一昨日だったかな?あんたはちゃんとニュースを見ているの?」と詰問された。おかんと話すと、毎度毎度「ニュースをちゃんと見ているのか?」と責め寄られ、どうも弱い。あんまり時事には興味がないから、知らないニュースも多いのだ。まともに返事をすると矢継ぎ早に責められるので、適当な返事と近況を話して電話を切った。早速、インターネットで調べてみると、それに関連した記事がずらずらっと並んでいる。「芦毛の怪物、オグリ死す」「放牧中に骨折、安楽死」「ユタカ、オグリの死に驚き」・・・。
僕がオグリキャップに初めて会ったのは、いつだったろう。高校生の時か。いや、中学生の時だったかもしれない。
北海道日高地方。苫小牧から襟裳岬にかけて海岸沿いに国道235号線を南下していくと、新冠(にいかっぷ)町という小さな町にぶつかる。新冠町は昔から馬産の有名な町で、この辺りはどこもそうだが、人口よりも馬の数の方が多いと言われている。その新冠町のはずれに、国道から内陸の山間部へと入っていく道道がある。この通りはサラブレッド銀座と呼ばれ、牧場だらけというのか、右を見ても左を見ても放牧地、というような通りなのだが、この道道沿いにオグリキャップが余生を過ごしていた牧場がある。名を優駿スタリオンステーションといい、競馬好きには知られた有名な牧場である。駐車場を降りて、敷地内の放牧地の間道を抜けた奥の一角に、オグリキャップはいつも放牧されていた。
オグリキャップを見に来る観光客は多く、おかんと初めてそこを訪れた時も他県のナンバーを背負った車がチラホラいたのを思い出す。敷地内には土産物店まであり、そこには現役時代の口取り写真や記念品が飾られ、絵はがきやペンや人形やといったグッズが販売されていた。競馬をよく知らない方でも、このオグリキャップの人形を持っていた、という方は多いんじゃないだろうか。灰色をした馬の人形で、背中のゼッケンにオグリキャップと書かれてあるやつだ。手のひらサイズの小さなものから大型犬くらいありそうなものまで、90年代頭にすごく流行った。UFOキャッチャーの景品でよく出ていた気がするが、この人形はホント至るところでよく見かけた。山田洋二監督の映画「学校」でもオグリキャップの競走シーンが使用され、当時はきっと社会現象だったのだろう。僕は幼かったので、実はそこまでよく覚えていないのだが・・。
しかし、オグリキャップって強かったんだろうか?いや、飛びぬけて強い馬ではなかった、と思う。今、現役時代のレースをYOUTUBEで見直してみても(それにしてもYOUTUBEってスゴイよなあ)、その後誕生したナリタブライアンやディープインパクトのような最強馬的感覚からは一歩下がった立ち位置のように思える。今回のことでジョッキーの岡部幸雄も「記録以上に記憶に残る馬だった」とコメントしているが、やはり並はずれた圧倒的な強さを持つ馬ではなかったのだろう。オグリキャップをあそこまでスターにのし上げたものは何だったのだろう?地方競馬出身。芦毛。要素はいくつかあれど、僕は引退レースであった有馬記念こそこの馬を不動のアイドルホースにしたのだと思う。もし、あの有馬記念を勝っていなかったらこれほどまでの存在感はなかっただろうし、逆にあの有馬記念を勝ったからオグリキャップはオグリキャップ足り得たんじゃないだろうか。そして、そのためにというか、なんというか、前3走で敗北を喫したことがまたイイ味になっている。落ち目に見えたかつてのスターが有終の美を飾るという、まるで小説のようなラストランがオグリキャップそのものなのだろう。これほど完結したストーリーに生きた馬もいない。昭和と平成の狭間という不安定な時代に起こった奇跡であった。いや、そういう時代だったからこそ、奇跡は必然的に起こったのかもしれない。とにかく、ハイセイコー以降、平成になってからも、これほど世間に愛された馬はいないだろう。オグリキャップはエリートではなかったし、「器用な」馬ではなかった。子孫にもこれといった馬はいない。老後は見世物のような生活だったのかもしれない。それでも25年生きた。人間でいえば100歳の大往生である。そういえば、どこかの偉い人が言っていた。「無事是名馬なり」と。
一頭の名馬があの世に旅立った。改めて、この馬の功績を思う。オグリキャップ、競馬史に残る競馬をありがとう。一競馬ファンとして、御冥福をお祈りします。合掌。


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