あっ！とお的なブログ

この前、居候先である先生宅の奥さんとお話した時に、どういう展開だったか、蝉の幼虫についての話題が出てきたのだけど、その蝉の幼虫の名前が思い出せずに非常にもやっとした思いをした。
自分は幼少のころに、庭や近所にある菩提寺の境内で、時々こいつを見かけては、そのずんぐりむっくりな体型とよちよち歩きのかわいさに見惚れ、見入っていた記憶がある。小学校に上がり、友達が出来てからは、その蝉の幼虫のことを共通の名前で呼び合っていたけど、中学に上がる頃には、もう虫取りをすることもなかったし、その存在を思い出すことはあまりなかった。あれから１０年超が経過し、今、パソコンにて蝉の幼虫の写真を前にし、どうしても、その名前が思い出せなくて悔しい。
「あれえ、何て言ったかなあ。えーと、カタカナ五文字くらいで・・・」
と、一人首をひねる僕に、奥さんも
「あれ、名前があるの？こう・・まあるっこいやつでしょ。えー、何ていうんだろう。ヤゴじゃないしなぁ」
と一緒になって悩んでくれたのだけど、結局、わからずじまい。
自分は確かに子供の頃、蝉の幼虫をある呼び名で呼んでいた記憶があるので、思い出したいのだけど、喉元まで来て引っ込んでしまう。ああ、もどかしい。
奥さんが気を利かせてくれ、パソコンで『蝉　幼虫』というワードを検索してくれた。そのワードに引っかかり、たくさんの情報が出てきたけど、やっぱり自分の求めている名前は出てこない。というより、その中に意外な情報を見つけて自分は驚いた。なんと蝉の幼虫に固有名詞などなく、蝉の幼虫は蝉の幼虫だったのである。
「え？では自分が子供の頃に呼んでいた、あの名前は何？もしかして市内限定？」
と不安になった自分であったが、どうやらそれはビンゴのようで、こんなサイトを見つけた。
これによると蝉の幼虫というのは、地域ごとに呼び名があったりなかったりするようで、お暇でしたらご覧になってみてはいかがでしょうか。あなたの出身地の蝉の幼虫の呼び名が載っているやもしれませぬぞ。
http://homepage2.nifty.com/saisho/nameofnymph.html（全国の蝉の幼虫の呼び名をまとめたサイト）

それで、肝心かなめの自分が知りたい名前なのだけど、このサイトにも出ておらず、もう本気で悔しかったんだね。夜に親に電話してしまった。自分から親に電話をすることはあまりないのだけど、たまに電話したと思ったら、「蝉の幼虫の名前ってなんていうんだっけ？」と言うんだから、まあ、ふざけた息子だ。
ところが、そんな頼みの綱であった親までが「そんなものは知らない」と言う。「聞いたことがない」とまで言うのだ。あにはからんや。では、あの呼び名とは一体何だったのか。
は！もしかして子供限定か。あれは子供たちだけの呼び名だったのだろうか。そういう可能性はある。子供の時って、大人は知らない、子供同士にしか通じない言葉があるものだ。
それで今度は地元の友達に電話をかけて、これも数カ月ぶりの電話。仕事中か、出なかったのだけど、数時間後、かけなおされてきた電話をシュバッと取った自分。のっけから例の質問はしづらく、適当なつなぎ。
「やあやあやあ、元気？」「うん、元気？」「どう、最近調子は？」「まあまあやね」「まあまあってどないさ」「ぼちぼちって感じ」「ぼちぼちか。仕事はどうしてるの」「相変わらず行ってるよ」「そう、子供はどうさ？」「大きくなったよ、かわいいねえ」「そうか、俺も子供が欲しいなあ」「たかさん、いつこっちに帰ってくるん？」「ん～、しばらくは帰らんわ」「そうか」「ところでさ」「なに」
「蝉の幼虫の名前って何だっけ？」
「蝉の幼虫？」また、なんで？と続きそうな会話だが、そこはわが友。「蝉の幼虫？蝉の幼虫って、あのもぞもぞしたやつでしょ？」とナイスなツッコミ。
「そうそうそう！あれ、名前があったでしょ。何て言うんだっけ？」
「え？あれ名前なんてあった？」
「あった、あった」
「ん～、いや覚えてないわ。（嫁さんに向かって）ねえ、蝉の幼虫の名前ってあった？」
「（受話口の向こうで）え、なに？蝉の幼虫？」
「そう」
（・・・嫁さんまで巻き込んでしまったなあ）
「知らない。なんで？」
「いや、たかさんが蝉の幼虫の名前が知りたいんだって」
「・・なんで？」
「わからない。・・もしもし、たかさん？やっぱりわからないわ」
「そうか、ありがとう」
「いや、いいよ。ちょっと俺も周りに聞いてみるわ。分かったら電話するね」
「ありがとう」
「それじゃ」
「うん、それじゃ」
ポチっと電話を切ってから、もう自分は蝉の幼虫の名前にこだわるのをやめた。
しかし、あんなに愛くるしい姿をした奴が無名だなんて。昆虫学会かどこか分からないけど、そういう組織で是非あいつに全国共通の名前をつけてやってもらいたい。公募したら、めっちゃ集まると思うんだけど。誰か決めて！