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宮本武蔵(1584~1645)は梅毒にかかっていた。という話がある。
というのは、武蔵が残した書物の中に梅毒の感染を疑わせる記述があるからなのだが、定かなことは分かっていない。
ただ、宮本武蔵が生きた時代の中ですでに梅毒は日本にも蔓延していた。
そもそも、梅毒の始まりは15世紀と言われる。
アメリカ大陸を発見したとされるコロンブス(船団)が、発見した新大陸(ハイチ諸島)の原住民と性交渉し感染、それをヨーロッパに持ち帰り、世界に蔓延したとされている。
もともと、梅毒はアメリカ地方の風土病だった。それが後、半世紀も経ず日本にまでたどり着き、瞬く間に世界に蔓延したというのは、考えてみれば凄いことだ(日本へはバスコ・ダ・ガマの東方探検によって持ち込まれたという)。世界は、世界中の人間の性交渉によってつながっている。それは昨今のエイズ感染においても同じだろう。
エイズの場合、現在ではカメルーンのチンパンジー起源説が有力だが、これもやはりアメリカで1981年に初症例が報告されてから、およそ10年ほどで感染者は100万人を超し、世界に蔓延した。
エイズ発生の初期、これが同性愛者の病気だとか、薬物中毒者の病気といったイメージがあった。が、今は周知の事実であるように、当然、異性同士のセックスにおいても感染することが知られている。ただ、男女間での通常のセックス(精液・膣内分泌液)による感染率はそれほど高くなく0.1%~5%ほど。一方で、同性愛者の病気という概念があながち間違いでないのは、同性愛者の場合は、性交渉による感染確率がぐんと上がるからだ。
というのは何故かというと、男性の同性愛者というのはアナルセックスを基本としているからで、腸壁というのは粘膜が弱く、出血しやすいうえ、毛ズレなどによって性器に傷も付きやすい。そこから容易に感染しやすい状態に陥る。ちなみに(輸血など)血液を介した場合の感染確率は80%と、かなりの確率になる。
自分が小さい頃、小学生3、4年(90年代初頭)くらいの頃だったろうか。近所の団地で友人とサッカーをしていると、後輩が転倒して、足を怪我した。近くにいた大人が寄ってきて、その子のけがの対応をしながら、僕らに「近寄るんじゃない」と言い、手で制した。その主婦は真面目な顔をして
「他人の血液に触るとエイズになる!」
と言っていたが、その子はエイズでなかったろうし、今考えれば、当時の世間がそれだけエイズに対して知識不足、認識不足だったのだろう。ハンセン病や水俣病などの公害病もそうだが、原因不明の病気が発生した時の世間の反応というのは、パニックに近いものがある。
少し話がずれた。
エイズの話をしたが、エイズは性感染症であって性病ではない。梅毒のほかにおもな性病はいくつかあるが、最も有名なのは、淋病だろう。
梅毒やエイズと違い、淋病には命の危険性はない。しかし、患部からの膿や痛みを伴うもので、苦痛であることに変わりはない。
淋病に10回かかった男性の話を又聞きしたことがある。淋病というのは、不思議なもので、普通病気というのはかかればかかるほど、体の中に抗体が出来て、その病気にかかりにくくする。これは免疫の働きだが、淋病は逆でかかればかかるほど、免疫が弱まっていくという。1回より2回、2回より3回かかった人の方が次の感染率も高まっていく。淋病に10回かかった男性というのは、すでにそれによって陰部が変形していたそうだが、面白いのは、それだけ淋病を経験すると、性交してかかった瞬間に「今、淋病になった」という感覚を認識できるようになるそうだ。普通は淋病の感染から病状発生まで最低でも数時間かかる。それが性交後、すぐに分かるというのだから、経験則というのはすごい。
最近は、毛じらみが増えているそうだ。シラミなんて、昭和、それも戦後位の悲惨な生活環境の中での出来事というイメージがあるのだが、現在、性病科を訪れる患者で、毛じらみを患う若い男女が増えているのだという。シラミの場合、蚤のように取って捕まえるということが出来ず、陰毛と表皮の間を行き来し生活しているので、処理としては陰毛を剃髪し、専用の殺虫剤を患部に振りかける。毛じらみも、性交渉によって感染する性病の一つで、猛烈な痒みを伴うが、無自覚のままに性行為を続ければ、無限に広がっていく。
性病は歴史の中でも、あまり表ざたにされない。が、これほど如実に人類を語る病気もないかもしれない。性、食、睡眠、この3つが完璧にできれば大抵の病気など起こらないものだ。ほとんどの病気は、この3つのどれかに起因して発生する。食と睡眠は普段から気をつけているが、性はやはり疎かにされがちだ。だが、どれも等しく蔑ろにしてはいけない。