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仕事中にY先輩と豆腐屋について話した。
というのは、いつもバイト先のスーパーに豆腐をおさめに来る豆腐屋である。
先日、その豆腐屋の前を通りかかったら朝早くから電気をつけて仕込みなのか何なのか、働いている。早朝、というよりは深夜か。午前2~3時くらいのことである。
「Yさん、豆腐屋ってのはあれ、何時から働いてるんですかね?」
Yさんに聞いてみると、仕事中だったからか
「知りませんよ。豆腐屋に聞いてください」
と、すげなく返された。
そのうち、いつも豆腐屋が豆腐を納入しにくる時間になった。豆腐屋のおばちゃんが子供(孫)を連れて、スーパーの陳列棚に豆腐を並べ始める。
「ほら、豆腐屋が来ましたよ、今聞いてくればいいじゃないですか」とYさんが言うので、自分は仕事を抜け出して、そのおばさんに近寄り
「すいません、豆腐屋さん。あの…気になってることを聞いてもいいですか?」
と喋りかけた。おばさんは笑顔で
「はい、なんですか?」
と応えてくれた。
「豆腐屋さんは、朝、何時から働いてるんですか?」
質問の意味がよく理解できなかったのだろう。おばさんが思案げな表情をするので、補足のために
「いえ、先日、午前2,3時から電気がついてるのを見かけたものですから、朝何時から働いてるのか気になって」
と付け加えた。
すると、おばさんは「ああ」と腑に落ちたような顔つきになって、「2時から働いているのよ」と言った。
2時か、すっげえなと思い、再度こんな質問をした。
「え?てことは何時に寝てるんですか?」
「息子は昼寝したりするけど、私は9時くらいかな」
「9時に寝て2時に起きるんですか?」
「うん、そう」
「5時間睡眠?!」
「そおねえ」
というわけで、豆腐屋さんは夜9時に寝て、朝2時に起きるのだということを始めて知った。
が、しかし。
全ての豆腐屋がそういうわけではないだろう。豆腐屋の朝は早いといえども、みんながみんな2時ではないはずだ。もっと早い店もあるだろうし、遅い店もある。
というわけで、もう一軒、やはりうちのスーパーに豆腐を納めている別の豆腐屋さんに直撃取材してみた。
すると豆腐屋B店のおじさんいわく、「うちは6時」だという。
「6時?間に合うんですか?」
「うちは朝、遅いのよ。夜、忙しいから」
「あ、夜も何か仕事してるんですか?配達とか?」
「いや、ミニテニス」
「ミニテニス?」
「ミニテニスしてんのよ、夜は。あの、ほら、バドミントンみたいなコートでね」
「??」
「それから、カラオケね。カラオケ教室みたいなことやってるから、人集めて。それが月水金で、ミニテニスが火木土だから、夜が忙しくって」
「なるほど、それで朝が遅いと」
「そうそう、だからうちは6時に起きて作るの」
自分の仕事場である鮮魚コーナーに戻って、途中だった魚おろしをしながら、Yさんに先ほどの結果を話す。A店が2時で、B店は6時起きだそうです、というとYさんは
「え?Bは6時なんですか?!」
と驚いていた。無理もない。この会話をしていたのが朝8時なんだから、B店は約2時間で起床から豆腐製造、配達までを行っていることになる。凝固剤か何か使っているのだろうか。驚くべき速さだ。その点、A店はきっと手間暇かけているのだろう。
では!
この2店の豆腐屋。蓋を開けてみて、どちらが人気なのか?
というと、これはお客さんの好みでAが良いという人がいれば、Bが良いという人もいる。結局は好みである。
朝から、そんなことを考えていたら冷奴が食べたくなったので「今日は仕事終わったら家に帰って奴を食ってこましたろ」とひそやかな楽しみを心に抱き仕事した。
仕事終わって案の定、案の定というか、何かにつけ忘れっぽい頭をしている自分は豆腐を買い忘れて帰ってきた。くっそう。せっかく味くらべしようと思ったのに。睡眠5時間A店の豆腐と、夜はカラオケ教室B店の豆腐。うまいのはどっちなんだ。それとも、なんだかんだで男前豆腐店が一番うまいのか。
しかし、あれだ。なんかみんなそれぞれの人生を楽しんでる感じがするのは自分だけだろうか。はは、愉快だ。